MEDIA

2014.08.23

「GQ JAPAN」(2014年10月号)で、チームラボ猪子の連載。

連載「日本、アジア、そして21世紀 拡大版」
第十四回「
「文化の作り方」は非連続である」

チームラボの代表・猪子寿之が、変わりゆくメディア環境を思索する人気連載。今回は、文化が滅ぶ道は善意で舗装されている、というお話。



本連載の第12回は「文化は連続している」というタイトルでした。文化の本質的な部分というのはジャンルを超えて、無自覚に非言語的に連続していくものだという話です。その時は、歌舞伎の「見得」や仮面ライダーの「変身」、メイドの「萌え」、そしてアイドルの「振り付け」などは、一見すると無関係な文化に思えますが、実はポージング文化であると見ると連続しているのだ、というお話をしました。


けれども、作り方とか方法論というものは、まったく連続性がなく非連続であると考えています。


例えば、最近、世界的に流行したアニメ映画「アナと雪の女王」は、アニメの本場と言われる日本でも大ヒットしています。実際、歴代のアニメ映画のなかでも、日本国内での興行収入が「千と千尋の神隠し」に次いで2位となっています。20世紀末は、日本のアニメが世界最高峰だと言われていました。けれども、気がついたらピクサーと合併したディズニーが世界で圧勝しはじめています。ピクサーは、CGによる新たな表現と新しい作り方を信じて、これまでのアニメとは違った作り方や方法論でアニメを製作しています。実は、ディズニーは、自社で何度かCGにトライしたけれど失敗したといいます。しかし、ピクサーと合併することによって、新しい時代を乗り越えようと試み、そして、実際に乗り越えることに成功したのです。一方、日本では、大御所がCGという新しい方法論を否定し、これまでのやり方にこだわると宣言したことが日本の中で美談のように語られていました。もちろん、個人としてそのようなスタイルを採りつづけるのは良いのです。しかし日本では、新しい方法を否定して従来のやり方にこだわることが、職人的でかっこいいという美談になっていたのです。そして、アニメそのものも、いつのまにか世界的な競争力を失いつつあります。ピクサーのような、まったく違う方法論を持つ会社が、いまや世界で、結果的に最高峰のアニメをつくっているのです。


アニメやアイドルと文化的な連続性を感じる初音ミクも、もちろん、これまでのそれらと、作り方や方法論がまったく違います。それは、スマートフォンが、携帯電話の延長上にあるように見えても、その作り方、方法論がまったく違うことに似ています。実際、スマートフォン分野のビジネスを手がける主要なプレイヤーも、携帯電話時代とはまったく違うということに似ています。初音ミクという、ポップスみたいな文化的ジャンルが、今までとまったく違う方法論によって生まれているのです。一見同じように連続している文化であっても、まったく非連続な方法論によって作られたものに取って代わられるという現象です。


以前にも書きましたが、文化の本質的な部分というのは、意識せずとも、今の時代にあった新しい文化が生まれ続ける限り、受け継がれていきます。今の日本に文化的な停滞感があるのは、文化を守ろうとするが故に、方法論を守ろうとしてばかりいるうちに、海外のまったく違う新たな方法論によって生まれた文化に取って代わられてしまうという結果を招いているせいではないでしょうか。方法論にこだわればこだわるほど、守ろうとすればするほど、いつのまにか、海外でまったく違う新たな方法論によって生まれた文化によって、やられてしまう。つまり、方法論を守ろうとすることがかっこいい、方法論にこだわることが美徳みたいな意識が強いけれども、守ろうとしている文化が、結果的に海外のまったく新しい方法論でつくられていく文化によって、その文化のジャンルがまるごと取って代わられ、守るはずだった文化がなくなっていくのです。「文化を守ろうとする気持ち」と「方法論を守ろうとする気持ち」がごっちゃになることによって、文化を守ろうとすることが、結果的に文化を滅ぼすことになっているのです。


一方、ディズニーの生き残り方はすばらしく見えます。新しい作り方、方法論にチャレンジするものの、それが不可能であるとわかったならば、もっと新たな作り方、方法論にチャレンジしているピクサーとくっつき、その作り方、方法論を受け入れて、彼らのやり方に従ったのです。そして、結果的には、ディズニーという文化を連続させ、発展させることができているのです。新しい作り方、方法論を持つところをまるごと受け入れる、または任せる。プライドがズタボロになろうとも、そうした姿勢が結果的に文化を連続させ、発展させるのです。


社会全体として、文化を守るだとか、文化を維持するという意識が、実は、文化の本質的な連続性を切断し、結果的に文化を滅ぼす危険性を持つのです。そして、文化を守ったり維持したりしようとすることよりも、一見、これまでの文化が滅ぶように感じても、新たな文化が生まれやすい環境を作ること、そして、これまでの文化を愛する人からすると、一見下品だったり、低いクオリティに見えるかもしれないけれども、新たに生まれる文化すべてを、全面的に肯定する社会である方が、文化の本質的な部分を守り、維持でき、発展させられるのです。何せ、文化の連続性とは、無意識で非言語的であるために、新たに生まれる文化のどこに、文化の連続性があるか、すぐにはわからないからなのです。



GQ JAPAN

GQ JAPAN(2014年10月号/コンデナストジャパン)
2014年8月23日(土)

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