MEDIA

2014.07.25

「GQ JAPAN」(2014年9月号)で、チームラボ猪子の連載。

連載「日本、アジア、そして21世紀 拡大版」
第十三回「
今日の僕の仕事を、僕が小学校の頃、どの大人が想像できたでしょうか」


チームラボの代表・猪子寿之が、変わりゆくメディア環境を思索する人気連載。今回は、すべての子どもに「共創(共同で創造的)」を、というお話。


 海外の美術館で展覧会をした時に、非常に驚くことがあります。それは、子どもが非常に多いのです。日本では考えられないくらい、現代アートの展示に親が子どもを連れてきているのです。日本と違って子どもが騒いでもあまり気にしないというか、そういうものだと思っているのでしょう。親が気兼ねなく連れていけるので、子どもが多いのだと思います。もし、日本も子どもが騒いでよいのなら、美術館にもっともっと子連れが増えるのかもしれません。昨今、世界中の親たちは子どもを現代アートに触れさせたいと思っているのではないでしょうか。それは、世界中の親が子どもにクリエイティブになってもらいたいと考えているからだと思います。

 僕は、自分が仕事をしていて、非常に大事な2つのことに気付きました。1つ目は、クリエイティブであること。アップルやグーグルを見てもわかるように、21世紀はクリエイティブな産業がとても重要になってきます。クリエイティブのチームが変わるだけで、忘れ去られかけていたブランドが復活したり、すばらしい美術館が建つことでたくさんの人が訪れるようになったりします。そこまでの話でなくとも、ソーシャルメディアに出す情報は、写真やテキストの見せ方で情報の広がりが全く変わります。そして、仕事そのものも、猛烈なスピードで変化しています。今日の僕の仕事内容を、僕が小学生になったばかりの30年前にどの大人が想像できたでしょう? 30年前の自分に教えられるなら、30年後の君というか僕の仕事は、今の君というか僕には全く想像がつかないから、大人が大事だよ、と言っていることを鵜呑みにせず、新しいことを学ぶのは非常に楽しいことなんだと教えたい。好奇心を増やして、創造することの喜びをもっと教えてやりたいと思うのです。そして、覚えることが苦手だった自分に、その克服に時間をかけるよりも、創造することに時間をかけてほしいと思うのです。創造性は、歴史の年号を覚えることよりもはるかにはるかに重要な、計算がうまくできることよりも大事なことなのです。

 2つ目は、チームで創りながら考えること。現代は専門領域の進化がとても速いにも関わらず、何かを考えたり創ったりしようと思うと、1つだけの専門領域では解決できません。また、多くのことが言語だけで考えることが不可能になってきています。例えば、はじめてiPhoneのようなものを創る時、どんなインターフェイスがかっこよくて気持ちがいいかを、前もって言葉で決めることはできませんし、前もってデザイナーとエンジニアの仕事範囲を分けることもできません。デザイナーとエンジニアが一緒になって作りながら、実際触って体験しながら、最もかっこよくて気持ち良いインターフェイスを探っていかなければなりません。ですから、個人プレイではなく、いろんな人々と、共に作りながら、考えていくことが大事なのです。

 チームラボの同世代のメンバーに子どもが出来始めました。メンバーが学校に行くと、自分たちが小さかった頃とほとんど変わっていなくて驚愕するそうです。今では、ネットがなかった時代にどんな風に仕事をしていたのか想像できないくらい、もしくはケータイがなかった時代にどんな風にデートに誘って会っていたのか想像できないくらいライフスタイルが変わっているのに、学校はあまりにも変わっていません。

 授業は暗記の延長で、正解を覚えていることが、正解にたどり着く唯一の方法。逆に、自由な発想や他人と違った行動は、正解になってインセンティブになることはありません。むしろ、間違ったものとして矯正されます。そして、日本の教育は、実は、超、「個人主義」なのです。徹底した個人主義を学校で叩きこまれます。宿題は個人でやります。テストも受験も徹底して個人の成果で測られます。米国で教育を受けて起業した齋藤ウィリアム浩幸さんが著書『ザ・チーム 日本の一番大きな問題を解く』(日経BP社)で、日米の教育の違いについて書いているのですが、アメリカは実はチーム主義。子どもの時からチームで生きていくことを教えられます。日本は個人主義。子どもの時から徹底して個人の能力を伸ばすことに集中させられ、個人テストで評価されます。もう少し言えば、社会全体で多様ではなく、均質的な能力を伸ばそうとしていると感じます。なので、日本はグループ活動や集団行動が得意。集団行動では、飛び抜けた長所がなくとも、みんなが均質的な能力で、個人としての欠点が少ない集団がうまくいきます。飛び抜けた長所が多様にあり、欠点も多様にあるような個人の集団は、集団行動はうまくいきません。グループとチームは違うのです。チームで成果を出すことを鍛えるという面が、日本の教育には欠けているのです。

 さらに、現代の子どもたちはスマホに夢中になっています。脳はスマホを通して誰かとつながっているかもしれませんが、身体は徹底した個人作業。しかし、人間はあらゆる体験を通して世界を学ぶのですから、動きながら身体でもものを考える生き物です。

 ですから、子どもたちにとって創造性とチーム力が非常に大事になってきていると思うのです。子ども達が、同じ空間で、自由に体を動かしながら、共同で、創造していく「共創」の体験をする、そんなことが現在は、急激に大事になっているのではないだろうかと感じているのです。


 

GQ JAPAN

GQ JAPAN(2014年9月号/コンデナストジャパン)
2014年7月24日(木)

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